資本金はいくらにすべきか|1,000万円の壁と1円設立の落とし穴
資本金はいくらでもよいわけではなく、金額によって税金と手続きが変わります。 しかも変わり方が連続的ではなく、特定の金額を境に段差ができるのが厄介なところです。 その境目を先に押さえておくと、迷う範囲がかなり狭まります。
1,000万円未満なら消費税が2期分免除される
資本金1,000万円未満で設立した会社は、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。 これは資本金1,000万円以上だと初年度から課税事業者になるためで、 1,000万円という数字がそのまま分かれ目です。
ただし2期目の免税を維持するには条件があります。 1期目の前半6か月(特定期間)の課税売上高と給与等支払額が、両方とも1,000万円以下であることが必要です。 どちらかが超えると2期目から課税事業者になります。
インボイス登録をすると免税は消える
重要な点として、インボイス発行事業者に登録すると、この免税は適用されません。 取引先が課税事業者中心なら登録せざるを得ないことが多く、 その場合「1,000万円未満にして免税を取る」というメリットは実質的に消えます。 BtoCが中心で、取引先がインボイスを求めてこないなら免税のメリットが残ります。
なお、免税事業者がインボイスを機に課税事業者になった場合の負担を軽くする「2割特例」は、2026年9月30日までの課税期間で終了します。 これから設立するなら、この経過措置はほぼ使えない前提で考えたほうが安全です。
2,142万円までは登録免許税が変わらない
登録免許税は資本金の0.7%ですが、最低額が決まっています。 株式会社は15万円、合同会社は6万円です。
- 株式会社:資本金 約2,142万円 までは15万円で一定
- 合同会社:資本金 約857万円 までは6万円で一定
つまり株式会社なら、資本金を100万円にしても2,000万円にしても登録免許税は同じです。 「税金が増えるから資本金を抑える」という判断は、この範囲内では意味を持ちません。
定款認証手数料は300万円で段が変わる
株式会社のみ必要な定款認証手数料は、資本金の額で3段階です。
- 100万円未満:30,000円
- 100万円以上300万円未満:40,000円
- 300万円以上:50,000円
差は最大2万円なので、これだけを理由に資本金を決めるほどのインパクトはありません。 ただし境目のすぐ上(たとえば資本金300万円ちょうど)にする場合は、 1円下げるだけで1万円変わることは知っておいて損はありません。
1円設立の落とし穴
法律上、資本金1円でも会社は作れます。ただし実務では次の壁に当たります。
- 法人口座の開設:資本金が極端に少ないと、審査で不利に働くことがあります
- 許認可の要件:建設業・人材派遣・旅行業などは、 業種ごとに財産的基礎の要件があり、一定額の資本金や純資産が求められます
- 初期の運転資金:資本金は会社の初期資金そのものです。 1円にすると、設立直後の支払いをすべて代表者からの借入で回すことになります
結局いくらにするか
制度上の段差をまとめると、判断は次のように整理できます。
- 上限は1,000万円未満(消費税の免税を捨てないため)
- その範囲内なら登録免許税は変わらないので、税金を理由に減らす必要はない
- 下限は当面の運転資金と許認可の要件で決まる
よく使われる100万円〜300万円という帯は、この3条件を満たしつつ 法人口座の審査でも極端に不利にならない、という現実的な落としどころです。
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本記事は2026年8月1日時点の制度にもとづいています。 消費税の取扱いは個別事情で結論が変わるため、 実際の判断は税理士など専門家にご確認ください。